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第21回:『ノロウイルスによる食中毒、感染症の発生とその予防』

近年、ウイルスの検査法が進歩を遂げ、ノロウイルスやロタウイルス、アストロウイルス、アデノウイルス、サポウイルスなどによる食中毒や感染症(感染性胃腸炎)の発生が容易に見つけられるようになり、前記ウルイスによる食中毒や感染症の発生が国内で増えています。国の食中毒発生状況をみても、ここ数年、食中毒の約3割をウイルスが占め、その99%以上がノロウイルスによって発生しています。ノロウイルス対策が、ウイルス性食中毒の発生(拡散)防止につながると言っても過言でありません。

ノロウイルスによる食中毒や感染症は、ウイルスに汚染された食品を食べたり、ウイルスを持っている感染(発症)者から感染したからといって、すべての人が食中毒や感染症になるとは限りません。健康であれば殆どの人は、ウイルスに経口感染しても発症しなかったり、発症しても軽い症状で治っています。しかし、体の抵抗力(免疫力)が強くない、体力の衰えた(あるいは体調を崩した)人は感染しやすく、発症後の対応(治療)が遅れると、肺炎を併発するなど重症になって、生命を失うこともあります。

このノロウイルスによる食中毒や感染症が、今年も時季を問わず、例年より1カ月早く国内各地で多発し、流行期(12月から2月)に入り、その発生が急増して過去最多となっています。とくに、福祉(介護)施設や病院等医療施設、宿泊施設などで多発し、入院(入所)している高齢者が集団感染し、発症して死亡者が出ています。

このように、ノロウイルスによる食中毒や感染症は、体力が衰えた、体の抵抗力(免疫力)が弱くなっている人に多く感染、発症しており、お年寄りや子供、幼児は十分に注意する必要があります。

ノロウイルスは、細菌の30分の1以下の大きさ(直径27nm位)で、円形の特有の構造持つウイルスで、電子顕微鏡で観察しないと、その存在が分からない微小な生き物です。つい十年前まで「ノーウオーク様ウイルス」、「小型球形ウイルス(SRSV;small round-structured virus)」と呼ばれ、その存在や病原性などがはっきりと分かっていませんでした。1997年に食品衛生法が改正されるまで、ノロウイルスは食中毒の原因物質として認定されず、ウイルスによると思われる食中毒は、食中毒発生状況ですべて「原因不明」と報告されていました。しかし、1997年の食品衛生法の改正で、ウイルスも食中毒の原因物質に加えられ、「小型球形ウイルス」と「その他」で食中毒発生状況に載るようになりました。そして、2002年の国際ウィルス分類命名委員会でノロウイルスという正式名称が与えられたことで、2003年の食品衛生法の改正以降、呼称名を「小型球形ウイルス」から「ノロウイルス」に改めています。

ノロウイルスによる食中毒や感染症は、ウイルスが経口感染後、酸性が強い胃液中でも死なずに腸まで達して、大体21〜48時間の潜伏期を経て発症します。その主な症状は下痢や吐き気、嘔吐、腹痛、発熱(38℃以下)などで、同じ冬季に発生(流行)する風邪やインフルエンザの初期症状とよく似ています。前記症状は、通常、2〜3日程度で治まり、回復します。また、激しい下痢や吐き気などが数日続いた時でも、早く医者に受診して適切な治療(点滴など)を受け、十分な水分と栄養の補給を行いながら安静に過せば(殆どの場合)生命にかかわることはないようです。

ノロウイルスによる食中毒は、カキなどの二枚貝を食べてよく発生しています。ウイルスに汚染したカキの生食や加熱不足が主な発生原因になっています。しかし、ここ1年、カキを含まない食事でノロウイルスによる食中毒が発生したり、食事や食品と無関係にノロウイルスによる感染症が発生する事例が増えています。食品を介した経口感染だけでなく、ノロウイルスを体内に持つ感染〈発症〉者の便や嘔吐物を介した空気感染や飛沫感染、便や嘔吐物が付着した室内環境や器物等の表面から人の手指を介して、別の人に感染するなど、感染形態の多様化が認められます。

ノロウイルスは、加熱で容易に不活化して死滅しますが、加熱する食品の中心温度が85℃に達してから1分間以上加熱する必要があります。アルコールや水道水に含まれる塩素にも強く、多くの市販消毒薬に対しても予想以上に抵抗性があり、低温環境や環境水(井戸水や下水、河川水など)でも生存し、生残していることが判明しています。

また、上記したように、ノロウイルスによる食中毒は、2,3日で症状が回復しますが、発症して7〜10日間程度は、発症患者の便や嘔吐物にウイルスが含まれ、排泄されている可能性があり、それが感染源になるおそれがあります。便や嘔吐物に触れた手指を介して、調理用具や食器類、食品(飲料や菓子を含む)、手摺り、ドアノブ、シーツやタオル類、カーテンなどが汚染され、それらに触れて感染したり、嘔吐物が乾燥してエアロゾルとなって空中浮遊し、他の人に感染していくおそれがあります。

このようにノロウイルスは、食物の摂取による経口感染だけでなく、糞便や嘔吐物を介して人から人へと感染することを、調理従事者や看護師、介護士、家族等は知っておく必要があります。

感染(発症)者の糞便や嘔吐物に触れる時はマスクや手袋を着用し、触れた後は、石鹸を使って手を流水でよく洗い、食事前やトイレの後の手洗いも忘れないようにする。また、便や嘔吐物をふき取った紙類は、二重のポリ袋に入れて密閉し、廃棄する。また、便や嘔吐物で汚れた手袋や衣類は、消毒(熱湯中で煮沸したり、塩素系消毒剤で浸漬するなど)したほうが無難です。また、感染(発症)者の嘔吐物や手指等を介してウイルスの二次汚染が生じるおそれがある厨房や台所(調理器具や食器類を含む)、室内の床面や壁面、備品や生活用品、カーペット類、遊具類、空調設備、手すり、ドアノブ、トイレや洗面所、浴室などはまめに掃除、洗浄、清拭して、必要に応じて消毒を行い、室内の居住(作業)環境を清潔に保つ必要があります。

現在、感染(発症)者の便や嘔吐物を介した感染や、施設の厨房設備や調理器具、食器類、空中設備、人(調理従事者や看護師など)を介した感染が多くなって、同一施設で感染を繰り返す事例も見受けられます。このような環境汚染や空気感染が原因と考えられるノロウイルスによる食中毒や感染症の発生が国内各地で認められています。一応、人から人への感染や環境由来の二次汚染が原因と考えられますが、その多くは疫学調査で原因究明が難しく、食中毒発生状況でも原因不明で報告されているようです。

いずれにせよ、“”と“食品”に“環境”を含めた総合的な食中毒対策や環境衛生管理の効果的、効率的な取り組み(ノロウイルス対策)が、食品の製造(提供)施設や医療施設、福祉(介護)施設などで求められています。ノロウイルスによる集団発生事例が多く出ている福祉(介護)施設や医療施設、ホテルなどの宿泊施設、教育施設(幼稚園、小学校など)は、この発生状況を十分に把握、認識して、今以上に衛生啓蒙して、個人及び組織全体の衛生意識を高めて、上記衛生対策に取り組む。個人が行う衛生慣行と施設の食品衛生管理や環境衛生管理を徹底して、食中毒や感染症の発生(拡散)を予防していく必要があります。

ノロウイルスによる食中毒や感染症の発生状況、その予防法(消毒や洗濯、掃除、清拭の具体的な方法など)について、厚生労働省のホームページで「ノロウイルスに関するQ&A(改訂:平成18年12月8日)」で詳細に記されています。このQ&Aを参考にして、有効なノロウイルス対策を実施して、ノロウイルスによる食中毒や感染症の発生(拡散)を防止して下さい。