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●Dr.ヨコヤマの専門家コラム

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第28回:『消毒薬の使用は適正に、消毒薬の使用上における注意点(感染症や食中毒の発生、拡散を防ぐため)』

今季は、ノロウイルスによる急性胃腸炎や食中毒が、4月に流行ピークが過ぎたにもかかわらず、今も国内各地で発生しています。さらに、麻疹(はしか)が全国的に流行し、6月下旬になっても散発し、病原性大腸菌(O157など)やサルモネラ属菌、黄色ブドウ球菌などによる細菌性食中毒も相変わらず国内各地で発生しています。

これから7月に入り、日中の気温が30℃を超え、湿度が高くなる日が多くなりますと、室内でかびが発生、繁殖しやすくなり、浴室などの湿気がこもる場所は、かび対策が必要になります。また、人の健康状態や体調も崩れやすく、食中毒や感染性胃腸炎にかかりやすくなっています。体力が衰えている高齢の要介護者は、とくに要注意で、彼等の健康や体調の状態、食品(食材を含む)や飲み水等の管理、施設(とくに室内)の衛生状態などに十分気を配る必要があります。福祉(介護)施設では、食中毒や感染症の発生を少しでも防ぐため、手洗いの励行だけでなく、必要に応じて手指や食器類・調理用具、手拭い・ナプキン類やシーツ類、マット類、浴室やトイレ等をきちんと消毒するため、消毒薬を使用する機会が増えます。

前回のコラムでは、施設で利用される抗菌製品(抗菌グッズ)について、過大な期待や過信、安易な使用を避けるよう、注意を促しました。消毒薬も同様で、正しく使わないと、その効果が十分に期待できません。食中毒や感染症の発生(流行)時は、有効かつ即効性がある衛生対策として、今までの経験や実績もあって、つい消毒薬に頼ってしまいます。その結果、消毒薬の乱用だけでなく、消毒の作業(行為)を習慣や馴れ、勘で漫然かつ安易に行ってしまう場合も生じます。薬液をむやみに撒き散らすなど手抜きや不備な点があったことに気づかず、「消毒した、消毒できた」と思い込んでしまう。消毒の効果を確認するなど科学的根拠を持たず、そのまま同じ消毒の作業(行為)を(いい加減に)続けていると、大変なことになります。施設で予期しない食中毒や感染症、薬害(皮膚炎や呼吸器系疾患など)の発生をもたらすおそれがあり、このような発生現場を(筆者は)多く見てきています。消毒の効果は、自分の目で病原菌の存在(死滅、生残)を確かめない限り、その効果の有無が本当に分からず、消毒薬の選択と使用は十分に注意する必要があります。

福祉(介護)施設では、消毒を目的としてアルコール系や第4アンモニウム塩系、塩素系など種々の化学薬剤(消毒薬)が導入、使用されています。しかし、筆者が見てきた施設の消毒現場の中には、消毒の実施内容に疑問を抱いたり、不安に感じる消毒の作業(行為)を平然と行っている現場もかなり見受けられます。安全で効果のある消毒を実施していくため、以下に記す10点をとくに注意、留意しながら、消毒を正しく実施することが望まれます。

  • 手指等皮膚表面や備品・物品類の消毒は、安全性や品質影響を考慮し、使用濃度を間違えないようにする。消毒現場での薬液の希釈調製は(できるだけ)避け、既に(使用濃度まで)希釈調製されている市販の消毒薬(信用のあるメーカー製品)を使用したほうが無難である。
  • 一種類の消毒薬では抗菌スペクトルの範囲が限られ、全ての病原微生物を殺滅することが出来ない。グラム陽性細菌からグラム陰性細菌、芽胞形成菌、酵母、ウイルスの広範囲にわたって殺滅を可能にするため、2〜3種類の消毒薬を常備し、殺滅対象微生物に応じて消毒剤を正しく選択し、消毒現場で適正使用する。
  • 消毒薬の使用で薬剤耐性菌が出現しないよう、消毒剤の不適正な使用や乱用を避ける。使用書(容器に表示)に記された用法通りに正しく使用して消毒を行う。消毒薬液を浸した布・脱脂綿・ガーゼ等で、一度消毒した清拭場所(部位)を、何度も(繰り返し)清拭して消毒することは(再汚染につながるおそれがあり)絶対に避ける。
  • 安全性確保のため、消毒薬液が被消毒物(食器や手摺り、ドアノブなど)の表面部位に残存したり、室内空気中に残留しないよう注意する。消毒後の水拭きや乾燥、換気を十分行うとともに、消毒作業中に要介護者を近づけないようにする。消毒作業中は、必要に応じてゴム手袋やマスク等を着用して消毒作業者の安全確保に努める。
  • 消毒薬の微生物汚染に十分注意する。上記(3)に記した薬剤耐性菌の出現につながることが多いため、消毒薬は常に蓋をして、使用期限を守り、薬液の継ぎ足しや繰り返し使用など不適当な使用方法は絶対に避ける。
  • 消毒薬の取り間違えや誤使用を防ぐため、消毒薬の使用前に表示ラベルや内容物(薬液)、用法・用量の確認を必ず行う。前記確認は、一人で行わず、出来るだけ2人以上で実施することが望ましい。
  • 要介護者(とくに認知症に罹患した高齢者)が消毒薬を誤飲したり、消毒薬液(とくにアルデヒド系やハロゲン系、過酸化物系など)に直接触れないよう、その使用や保管、廃棄にあたっては十分に注意する。
  • 未使用(あるいは使用済み)の消毒薬液を廃棄する時は、二次的な健康被害(薬害など)や環境汚染(生態系の破壊など)が生じないよう、薬品で中和したり、水道水で希釈するなど適正処理を行って無害にした後、下水管へ排水する。
  • 消毒薬の使用によるリスク(健康被害や環境悪化など)が生じないよう、消毒全般に関する指針や消毒薬の使用(保管、廃棄)実施マニュアルを準備、整備して、誰が消毒を実施しても間違いの無い、安全で確かな消毒効果が得られるようにする。さらに、消毒の実施内容に関する結果(記録)を書類で残しておくと、問題が生じた時に有用な立証資料になる。
  • 自施設で実施されている消毒全般について、時々、定期的に点検と見直しを行って、問題点があれば、是正(改良)して、常に目的通りに必要かつ妥当な(第三者が納得する)消毒を行えるようにしておく。
以上、(1)〜(9)に指摘した点をとくに注意しながら、消毒を実施するとともに、その作業(行為)が適正に実施されているかどうかについて、上記(10)に記す消毒の点検と見直しも必要です。この点検と見直しを行う時は、内部だけでなく、外部の消毒全般に詳しい専門家や試験研究機関、消毒薬メーカーなどによるチェック(評価)や指導・助言を(時々、定期的に)受けておくと本当に安心です。

このように、必要に応じて間違いのない消毒を的確にきちんと実施しながら、日常の健康管理や食品衛生、衛生慣行、環境衛生などに十分気を配って、健康な身体や衛生的な生活環境を維持することが重要と思われます。食中毒や感染症の発生を心配せず、健康で快適な生活ができるよう、高齢者がいる福祉(介護)施設は、今年4月に施行された改正医療法で国から提示された指針やガイドラインを参考にして、施設が一体となって自施設の状況に合った適切な感染予防体制(上記消毒などの微生物殺滅法を含めた衛生対策がきちんと組み込まれた感染予防指針や感染症(食中毒を含む)対策実施マニュアルの作成や、感染予防対策チームを設置と活動)を構築、整備していく必要があり、施設の利用者からも望まれていると思われます。

(2007.07.24)