今年は、5月〜7月にかけて国内で麻疹(はしか)と百日咳が、それぞれ6年、7年ぶりに多発し、さらに腸管出血性大腸菌(O157など)による食中毒や感染症も(相変わらず)各地で散発しています。いずれも、昨年の同期に比べ、感染(発症)者が多く出ており、腸管出血性大腸菌による感染では、大阪市内の保育施設で3歳の女児が死亡しています。この女児は、腸管出血性大腸菌(O157)に感染していますが、食事やおやつなど食物から同菌が検出されず、その感染源がはっきりしていないようです。
この例でも分かるように、保育施設などの人が多く集まる場所で発生する食中毒や感染性胃腸炎は、その感染源がいつも食べ物とは限らなくなっています。その発生原因(感染源)調査を進めていくと、食品の摂取以外の原因(空気感染や接触感染など)で発生しており、この二次感染による発生事例が増えています。
このような食中毒や感染症は、従来の食品類(飲料を含む)を中心にした衛生管理や、手洗いやうがい(洗口)、身だしなみなどの衛生慣行を守るだけでは、十分に防ぎ難くなっています。これに人の健康管理や施設(建物や敷地)の環境衛生管理が加わって、下表に示す総合的な衛生管理を実施することによって、その成果(効果)も着実に上がり、食中毒や感染症の発生が起こりにくくなります。衛生管理の対象を(施設全体の)目に見えるレベルから目に見えないレベルまで広げて、各衛生管理段階で、必要かつ妥当な衛生対策(微生物対策)を講じて、感染予防対策を推進、徹底する必要があります。
普段から下表に示す基本的かつ必要な衛生対策を段階的に、それも合理的、効率的に行って、総合的な衛生管理(感染予防対策)を(組織が一体となって)推進、徹底することによって、腸管出血性大腸菌(O157など)は言うまでもなく、それ以外の食中毒菌や感染症起因菌による感染も容易に防ぐことが可能になってきます。この取り組みの開始時は、かなり多くの経費や人手が必要になると思われますが、この取り組みを推進していくうちに、実施マニュアルによる標準化と衛生意識の高揚が図られ、無益なことや、無駄なこと、余計なことをしなくてもいいようになります。消毒剤や除菌剤等の化学薬剤も安全かつ適正に使用され、誰が行っても同じ成果(効果)が得られる効率のよい、無駄が省けた感染予防対策が実施出来るようになり、経費の節減、軽減や省力化にもつながります。
上記したように、年を追って食中毒や感染症の発生状況がかなり様変わりし、食中毒や感染症が(年齢を問わず)発生する傾向が認められ、介護施設でも、加齢等で体の抵抗力(免疫力)が衰えている高齢者(複数の慢性疾患や認知症を抱えている人が多い)が多く入所しています。彼等が、安全な環境で安心して介護を受けられるよう、上記感染予防対策を(少しでも早く)自主的かつ積極的に取り組んでいくことが望まれます。
| 対 象 | 衛生管理段階 | 衛生管理内容(具体的な衛生対策例) | |
|---|---|---|---|
| 建物外 | 1 | 清掃、グリーンキーピング、防鳥など | |
| 2 | 害虫・害獣の防除(駆除)など | ||
| 3 | 用水・排水(汚水)管理、廃棄物管理など | ||
| 4 | 消毒、防藻など | ||
| 建物内 | 環境 ・ 物品類 | 1 | 整理・整頓、補修、美化、採光(照明)、換気など |
| 2 | 防鼠、防虫、防臭(消臭)、防湿(防露)、防煙、空調*1など | ||
| 3a | 清掃、清拭*2、洗浄*2など | ||
| 3b | 清拭*3、洗浄*3など | ||
| 4 | 消毒、減菌、防菌・防黴・防藻の施工、防塵など | ||
| 5 | 滅菌、除菌、無塵など | ||
| 人 | 1 | 衛生教育*4、衛生啓蒙*4など | |
| 2 | 衛生管理、衛生慣行、作業(動線)管理など | ||
| 3 | 健康管理、自己申告、隔離など | ||
| *1 除菌機能なし *2 消毒剤や除菌剤等の抗菌性薬剤を使用しない *3 抗菌性薬剤を使用するため、殺菌(除菌)効果の確認が(試験検査等で)必要になる *4 感染症や食中毒とその発生(拡散)防止に関する必要な知識や制御(検査)技術等の習得を含む |
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現在、施設で発生する感染症は、その感染形態や発症症状が複雑多様化し、その対応(対策)も段々と難しくなっています。それだけに、食品の衛生管理に、施設の環境衛生管理や人(施設職員や入所者など)の健康管理並びに衛生慣行などを加えた総合的な衛生管理が欠かせません。必要な衛生対策(上表参照)が組織的に、効果的、効率的に取り組まれることによって、施設内感染の発生が著しく低減し、その分、安心と余裕をもって介護に携わることが出来、より良質な介護サービスの提供が可能になると筆者は思っています。
そういった意味で、自施設の状況に合った適切な感染予防対策が取り組めるよう、感染制御に詳しい外部専門家や消毒剤メーカー等の協力(指導や助言)を受けながら、上表の衛生対策を組み込んだ感染予防対策実施マニュアルの作成を早急に行い、このマニュアルを守りながら、総合的な衛生管理を行って、食中毒や感染症の発生(拡散)防止に万全を期すことが、施設の利用者からも求められていると思います。
(2007.09.18)