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感染予防教室

●福祉サービス別予防対策

(5)在宅における感染症

【 肺炎および下気道感染症 】

在宅療養例において、最も頻度の高い感染症です。脳血管障害後遺症などによる寝たきり高齢者や、神経変性疾患の直接の死因は、在宅例でも入院例でも肺炎が最も多く、在宅療養されている場合でも、肺炎合併時には抗菌薬の投与、補液、酸素吸入などのために入院治療が必要になる場合もあります。予防と早期発見が重要です。

咳
■原因微生物

通常の呼吸器感染症の原因となる微生物に加えて、誤嚥性肺炎では自分自身の口腔内常在細菌が起因菌となります。入退院を繰り返していたり、度々抗菌薬を投与されている場合は、緑膿菌やMRSAなど、耐性の強い菌も見られます。

高齢者、特に糖尿病合併例や既往のある場合は、結核にも注意が必要です。

■感染源・感染経路

家族など密接に接触する人からの感染がほとんどです。もちろん、家族に対する感染源となる可能性もありますが、通常は社会と接触の多い同居者の方が持ち込む場合が多いと考えられます。

■予防方法

誤嚥性肺炎の予防には、次の3点が基本です。

インフルエンザの予防には、インフルエンザワクチン接種が勧められます。環境対策として冬期は室温18〜20℃、湿度50〜60% に保つことが大切です。また、日常の手洗い・うがいは、他の感染症予防も含めて効果があります。

結核については、高齢者に多く、早期発見することが大切です。疑わしい症状には注意し、定期的に喀痰の検査等を行っておくことも必要です。

【 尿路感染症 】

一般に尿路通過障害がある場合や高齢者は尿路感染症のリスクが高く、特に尿路カテーテル留置例では頻度が高くなります。カテーテル留置の有無を問わず、尿路感染症に上行性感染を伴い、菌血症から敗血症性のショックに移行するような重症例もしばしば見られます。

尿路
■原因微生物

過去に尿路感染症を繰り返した既往がなく、尿路カテーテルが留置されていない場合は大腸菌が最も多く、カテーテル留置例や尿路通過障害があって感染症と抗菌薬投与を繰り返している場合では、弱毒の腸内細菌や緑膿菌、腸球菌、および真菌のカンジダなども認められます。

■感染源・感染経路

一般に尿路感染症の原因として多い大腸菌は自己の糞便中の菌であることが多く、カテーテル留置例では、細菌尿の合併がほぼ必発で、カテーテルや尿中の細菌が原因となると考えられます。

■予防方法
  • (1)外陰部を清潔にする
  • (2)十分な水分摂取により尿量を確保する
  • (3)膀胱留置カテーテルはできるだけ留置しないようにし、留置する場合は清潔を保つ

【 褥瘡の感染 】

寝たきり状態では皮膚の軟部組織の萎縮や低栄養のため、褥瘡を発生しやすく、問題となっています。特に仙骨部や大転子部の褥瘡は糞便や尿の汚染を受けやすく、尿・糞便細菌叢による感染を起こしやすいので、いったん感染を起こすと周囲または深部にまで炎症が広がり、蜂窩織炎、皮下膿瘍、髄膜炎、敗血症などへ進展します。

■原因微生物

皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌、糞便や尿に含まれる大腸菌などの腸内細菌に加えて、嫌気性菌の感染がしばしば見られます。褥瘡はいったん感染を起こすと治りにくく、抗菌薬を投与すると次々と菌交代により新たな菌による感染を繰り返すケースが多く、問題となっています。

■感染源・感染経路

在宅療養例では、褥瘡の感染源は自分自身の皮膚の常在菌、糞便や尿であることがほとんどです。最初に感染を起こした褥瘡からの滲出物が直接、あるいは介護者の手指などを介して他の部位に広がる恐れもあるので、褥瘡の扱いには厳重な注意が必要です。

■予防方法
  • (1)最低2時間以内に体位変換を行う
  • (2)体を動かす時は、無理に引っ張ったりするのではなく、体を手で支えながら行い、摩擦やずれを回避する
  • (3)適宜全身や部分清拭を行い、清潔に心がける
  • (4)バランスの良い食事摂取を心がけ、栄養状態・貧血の改善に努める

★知って得するさまざまな感染症「褥瘡について」参照

【 血管カテーテルの感染 】

最近は、在宅療養例でも血管カテーテルを挿入して高カロリー中心静脈輸液を施行したり、薬剤投与を行っている症例が増加してきました。血管カテーテル、特に中心静脈カテーテルは病院内で行なわれても感染のリスクが高く、在宅療養においても同様です。特に、不十分な消毒処置などが感染に結びつきやすいと考えられます。

点滴
■原因微生物

黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌、コリネバクテリウムなどの皮膚の常在菌が原因となります。また、消毒薬に耐性を示す菌が原因となることも多く、緑膿菌、セラチア菌なども認められます。

■感染源・感染経路

自分自身の皮膚の常在菌が感染源であることが最も多いが、輸液ルート、特に三方活栓などの接続部の汚染、輸液の汚染などもすべて感染源となります。

■予防方法
  • (1)カテーテル刺入部、注入ライン接続部の消毒を適切に行う
    (注入ライン接続部は一本化ラインを使用することが望ましい)
  • (2)注入する薬剤や輸液が汚染されないよう注意を払うる
  • (3)経験の十分なスタッフがカテーテルの挿入・管理を行う

【 その他 】

人工透析を行なっている場合のシャント感染、腹膜還流、気管切開、尿路変更、人工肛門の増設など、施されている医療処置が多いほど感染リスクは高くなります。一般に高齢者の感染症は感染巣がわかりにくいことが多く、胆道感染症や髄膜炎などでは診断の遅れることもあります。また、感染性腸炎など健常者に比べて基礎疾患のある場合ではなお、症状が強くなる感染症も多いので注意が必要です。

疥癬症はヒゼンダニによる感染症で、細菌による感染症ではありませんが、高齢者に多い感染症として注目されていますので重要です。

★知って得するさまざまな感染症 疥癬について 参照